心臓病の診断

身体検査

心拍数、呼吸数、体温測定を始めとした、五感を用いた検査です。特殊な機器を用いず、動物の外側か得られる情報を評価していきます。聴診では心音・調律はもちろんですが、肺音なども注意深く評価していきます。どの病院でも行う検査ですが、動物の病気を探っていく入口として、確かな技術・知識が必要なとても重要な検査です。

心雑音検査

心疾患の確定診断は、身体検査とレントゲン検査のみでは困難であることがほとんどであり、初診時には心臓超音波検査も必須となります。また、心雑音は一般的に先天性心血管異常、弁膜症や心筋症などの心疾患に関連して聴取されますが、心臓に器質的異常がなくとも無害性雑音や貧血時などに聴取されることもあります。心疾患を特定しにくい場合や心雑音の原因が明らかにならない場合に、循環器に関する精査を実施することが可能です。

レントゲン検査

胸部のレントゲン写真を撮影する事により、心臓の陰影(大きさ・形)、肺や気管、胸水の有無などを評価できます。心不全の際によく認められる肺水腫の診断はこの検査を用いて行います。
当センターはデジタルレントゲンを使用しており、迅速に検査を進めることができます。また、センター内はネットワークで結ばれており、撮影した鮮明なデジタルレントゲン画像を各診察室のパソコンから飼い様と一緒に確認することができます。

血圧検査

高血圧は動物でもしばしば認められ、心臓をはじめ体中の臓器に悪影響を及ぼします。また、血圧に作用する内服を処方する事も多いため、血圧の評価は大切です。血圧検査は動物の興奮をさけるため、できるだけ安静時に行います。日々の診療ではオシロメトリック法を採用しており、迅速に負担なく検査します。

心臓超音波検査

超音波診断装置を用いて、心臓の内腔や弁膜の構造、動き、異常な血流、血流の方向や速さなどを計測し診断や治療効果の判定を行います。痛みや危険性がなく負担の少ない検査です。当センターでは心臓検査の専用機器であるGE Medical社製Vivid E95とVivid qを使用しています。ドプラ機能、リアルタイム4Dエコー、経食道エコーなど多くの機能を備えています。確かな技術を持ったスタッフにより最新の設備で検査を行えますので、より正確な診断を行うことができます。

心電図検査

不整脈はもちろんのこと、伝導の異常や心臓のどこに負担がきているのかなどを検出することができます。
また、失神の原因を探る場合など、長時間の心電図評価が必要な場合にはホルター心電図検査を行います。ポータブルの小さな装置を専用の洋服のポケットに入れて3日間お家で過ごしていただき、心電図を継時的に記録します。記録された心電図を解析することで、失神したまさにその瞬間に不整脈があるかなどを評価していきます。

なお、聴診上リズムの異常がなかった場合でも、心電図の波形が幅広いなどの異常が見られることもあります。
洞房結節、房室結節、房室ブロックや脚ブロックなどの刺激伝導系の異常、電解質異常、徐脈による補充調律の出現、薬物に対する副反応など原因は様々です。麻酔時に心電図モニターを行った際に見つかり、診断治療が必要になることもあります。致死的な異常調律であることもあるため、正確な診断が必要となります。

治療の必要性のない心電図異常・不整脈もありますが、抗不整脈薬による治療、原因疾患の除去、ペースメーカ治療などが必要になる場合もあります。

血液検査・心筋バイオマーカー測定

血液検査は、全身状態の把握や心臓薬による副作用が生じていないかなどを評価するために行います。また、血液の固まりやすさを評価する血液凝固系検査もセンター内にて迅速に検査することができます。
心臓への負担の程度を評価する血液検査項目、心臓バイオマーカーの評価も行っております。NT-proBNPやANPは心臓病の重症度を評価する指標の一つになります。

血液ガス分析

血液の中のpH、酸素、二酸化炭素などを測定し、肺機能や酸塩基平衡の評価が可能です。開心による心臓手術の際にも、全身の状態を逐一把握するために必要な非常に重要な検査となります。

腎機能検査

腎機能検査としてイヌリンクリアランス検査および尿中蛋白測定も行うことがあります。
僧帽弁閉鎖不全症による心不全を除く他の併発症に関しては、特に腎臓疾患、内分泌疾患、消化器疾患に注意を要します。腎臓疾患は、ループ利尿剤による腎前性の高窒素血症や慢性腎臓病の評価をする必要があり、手術前後にイヌリンクリアランスを行って腎機能を精査必要があります。僧帽弁修復術後は腎機能が徐々に回復することが多いが、点滴を継続しなければいけない症例も時々みられます。

その他検査

必要に応じて副腎機能検査、甲状腺機能検査を行うこともあります。内分泌疾患では、副腎機能を注視しており、副腎機能亢進症および低下症においても治療が安定していることが望ましいです。消化器疾患においては、下痢ならびに膵炎の有無を注視しており、いずれにしても治療に反応している必要があります。凝固系の異常も手術結果に大きく影響するので慎重を要します。