犬猫の透析療法

JASMINE

腎臓の働き

1尿を作る

◎ 老廃物を体の外に出す
◎ 電解質を調節する
◎ 体の中の水分量を調節する
 

2ホルモンを作る

◎ 赤血球を作るホルモン(エリスロポエチン)を分泌する
◎ 血圧を上げるホルモン(レニン)を分泌する
◎ ビタミンDを体の中で働きやすい形にする
 

腎障害とは

◎ 腎臓が何らかの原因で障害を受けている状態を腎障害と言います
◎ 腎障害は、その原因により3つに分類されます。
◎ 腎前性腎障害:腎臓への循環が不十分なために糸球体濾過量(GFR)が低下した状態です。原因として、心臓病や脱水、出血、発熱、利尿薬の服用などが挙げられます。
◎ 腎性腎障害:腎臓自体の障害によって起こる腎障害です。腎性からの移行、薬剤性の障害、中毒性物質の摂取、感染によるものなどがあります。
◎ 腎後性腎障害:尿路の閉塞によりGFRが低下した状態です。尿管・尿道結石や腫瘍による尿路の閉塞によるものなどが挙げられます。    
 

腎不全とは

◎ 腎臓の働きが低下している状態を腎不全と言います。
◎ 腎不全が進行すると、様々な症状が起こります。
尿が出にくくなり、体の中に尿毒素がたまります。これにより、食欲不振、吐き気、意識障害などの尿毒症症状が現れます。
電解質の調節がうまくできなくなるため、カリウムやリンが上昇します。
体内に水分がたまって体が浮腫みます。
造血ホルモン産生が低下し、貧血を起こします。
血圧上昇ホルモンが多く分泌されるため、血圧が高くなります。
ビタミンDが活性化されないため、骨が脆くなります。
 

急性腎障害急激に腎機能が低下する状態です。尿の出が悪くなったり(乏尿)、全く出なくなったり(無尿)するため、死亡率の高い状態です。一時的に透析療法まで必要としますが、原因がなくなれば治る可能性はあります。
 
慢性腎臓病腎臓の機能が徐々に低下して腎不全の状態になったものです。症状の進行は緩徐ですが、段階的に急激な悪化を繰り返しながら進行します。急性増悪期に、救急救命のため、あるいは悪化した尿毒症症状を緩和するために透析療法が推奨される場合もあります。

 

尿毒症の症状

 腎臓の機能低下が進行し腎不全が末期の状態になると、尿毒症の症状が現れます。尿毒症は、下の図にあるような全身の重篤な症状を引き起こします。
 

急性腎障害の進行のイメージ

 なんらかの原因で腎臓が損傷を受けて急激に機能が低下した状態を急性腎障害と言います。原因として、脱水などによる腎臓の血流の減少、薬剤や長期間の血流低下などによる腎臓そのものの障害、腫瘍や結石などによる尿道の閉塞があります。

 原因が解除されれば、数日間で腎機能は改善することもありますが、腎臓そのものに障害がある場合は改善に数週間から数ヶ月必要です。また完全には改善せず慢性腎臓病に移行することもあります。腎機能低下が重度の場合は、腎臓の機能を代替するため、改善するまでの期間血液透析が必要になることがあります。
 

急性腎障害の診断基準

 犬猫における急性腎障害は、クレアチニンの値によってグレード分けされています。
グレード4あるいは5の段階では、高窒素血症が進行しており重度の腎不全と診断されます。
 

腎代替療法とは

 末期の腎不全に陥り、自分の腎臓の働きだけでは生命の維持が困難になった場合に、腎臓の働きを補助する治療法です。腎臓の働きが低下し、食事療法や薬物療法だけでは体液の量や組成の維持が困難となった場合には、自分の腎臓の働きだけでは命を保つことが出来なくなり、透析療法が必要となります。犬猫に対する腎代替療法は、腹膜透析や血液透析といった透析療法が用いられます。
 

透析治療の開始時期

 一般的に、血液尿素窒素 (BUN) が100mg/dL以上、クレアチニン濃度が5 mg/dL以上となった場合には、透析治療の介入が推奨されます。また、尿が出ないことで体液の量をコントロールできず、強いむくみ(浮腫)や心臓に無理がかかるために心不全状態となった場合、カリウムなどの電解質濃度が生命を脅かすほど異常を示す場合などにも透析治療が適応となります。
 

透析療法の治療効果

◎ 尿毒症症状の改善
 透析を行うとBUN、クレアチニンなどの尿毒症物質が除去されるため尿毒症症状が改善されます。また、体内の余分な水分も取り除かれ電解質と酸塩基平衡も調節されます。
◎ 貧血の改善
 透析は貧血の改善にも効果があります。増血剤を使用することにより、さらなる貧血の改善が期待できます。
◎ 高血圧の改善
 体にたまったナトリウムと水分が血圧を上昇させますが、透析で十分な除水を行うことで高血圧を改善することができます。
 

透析治療は腎臓病の動物の生命維持とQOL(生活の質)を向上させるためになくてはならない治療法です。しかしながら、透析治療によって正常な腎機能をすべて代行することや腎臓病を完全に治癒させることはできません。したがって、透析治療と適切な食事・薬物療法を併用することで、さらに透析患者さんのQOLの改善が期待できます。
この治療による目標は、腎臓病の治癒ではなく、動物が飼主様とより良い日常生活を送るために失われた腎臓の機能を補助することです。

 

血液透析の仕組み

 血管に針を刺して取り出した血液をダイアライザーの中に通して、老廃物の除去や電解質の調整を行ってから、再び体の中に戻します。
 体内の血液を外に取り出すためには、血液の出入り口を確保する必要があります。そのために、ダブルルーメンカテーテルという特殊なカテーテルを、頸静脈などの太い血管の中に入れて血液を効率良く出し入れします。カテーテルを通して血液が血液回路内へ入り、その先にあるダイアライザーで透析処理を受けます。透析された血液は血液回路からカテーテルを通して体の中に戻ります。

 血液透析装置は、血液回路内の血流を作り出すためのポンプの役割を担っています。この人工的な血液の流れは、できるだけ体の血液循環に悪影響を与えないように調節されます。また、体外循環を安定して行うためには、透析中に回路内で血液が凝固してしまわないようにするため、抗凝固処置が不可欠となります。透析が終了したら、血管から針を抜いて止血します。腎機能の改善の程度により、この治療を通常1回3時間程度、週に3回程度行います。
 

ダイアライザーの仕組み

 ダイアライザーは、小さな孔が無数に開けられた細い管が役1万本束ねられています。この管の内側を血液が、外側を透析液が流れます。
 この多数の管の細かい穴を通して老廃物や水分、電解質などが透析液の側に移動します。こうして不要なものがこし出され、血液は浄化されます。浄化された血液は体に戻ります。
 

血液透析治療の流れ

 

入院
カテーテルの設置
頸静脈などの太い血管にダブルルーメンカテーテルを設置します。
病状や動物の性格によっては軽い麻酔が必要になることもあります。
血液透析の開始
透析を行います。透析開始時には血行動態の変化が大きいので、
ゆっくりと始めます。血液検査で効果や合併症有無を確認します。
↓↑
血液透析の終了
血液の性状が目標まで改善したらゆっくりと透析を終了します。
カテーテルを首に巻きつけて保存します。
退院
血液性状や症状が改善し、透析からの離脱が可能と判断されると退院となります。
退院後も、定期的な点滴治療や、食事療法、薬物療法を行うことにより
少しでも病気の進行を遅らせることが大切です。
また、病状によっては維持透析が必要な場合もあります。

 
 

血液透析の合併症
不均衡症候群

 透析の導入期には、透析中や透析終了後に頭痛や吐き気(不均衡症状)が起こることがあります。これは、血液から老廃物は抜けますが、しばらくの間、脳の中では老廃物が残っていて、脳内の圧力(脳圧)が上がってしまうことにより起こります。不均衡症状が出ないように、最初は透析の効率(血液流量、ダイアライザーの大きさ、透析時間など)を落として行うようにしますが、症状が強い場合は、脳圧を下げる薬(点滴)を使用することもあります。
 

血圧変動

 透析中は血圧変動が起こる可能性がありますので、適宜、血圧測定を行います。血圧低下は、一時的な循環血液量の減少によるものが多く、生理食塩水の補充などで対処します。
 

出血傾向

 血液は体の外に出ると固まります。透析で使用する血液回路も「体外」であり、血液が固まらないように抗凝固薬(ヘパリンなど)を使用します。透析中ならびに透析後数時間、その影響が体内にも多少残ります。そのため、出血した場合には血が止まりにくくなるので注意が必要です。出血傾向が続くと、消化管潰瘍や脳出血、透析肺症(肺の出血、肺水腫)などが起こることもあります。
 

カテーテルに関連した合併症

 カテーテルが折れ曲がったり、血液が固まって詰まってしまったりすることで効率良く透析が行えなくなる場合があります。また、動物が自分でカテーテルを引き抜いてしまったりすることもあります。このような場合は、再手術が必要になる場合もあります。
 

感染症

 カテーテルの周囲や透析回路内に細菌が感染すると、全身の感染症を引き起こすことがあります。
 

消化器に関する合併症

 下痢や嘔吐などの症状が現れることがあります。血液透析の合併症としての膵炎の発症は稀ではありますが、早期診断が困難であるため重症化して致死的な経過をとることがあります。
 

血栓症

 血液透析中に、血液が体の外に出ると血液が凝固しやすくなるために血栓(血液の塊)が形成されやすくなります。血栓が血管に詰まって血流が遮断されることにより機能障害を起こすと血栓塞栓症になります。障害された部位により様々な症状が現れます。

 

JASMINE

献血ドナー募集

採用情報

連携獣医師のいる動物病院をご紹介