肺水腫

肺水腫とは

肺水腫は本来空気が出入りする肺に水分が貯まってしまう、命の危険がある病態です。
犬の肺水腫は慢性心臓弁膜症である僧帽弁閉鎖不全症によって引き起こされることが多く、肺水腫になると低酸素状態になり呼吸困難を起こしてしまいます。

通常、酸素は気道から入り、肺胞に取り込まれます。肺胞は、肺動脈と肺静脈をつなぐ毛細血管に囲まれています。肺動脈を流れる血液は、酸素よりも二酸化炭素を多く含んだ状態で、肺胞内の毛細血管に流れてきます。そこで毛細血管が、肺胞に入ってきた酸素を血液内に取り込みます。この肺胞のはたらきによって、酸素がたくさん含まれた血液が肺静脈を通じて全身に送り出されているのです。

肺水腫によって肺胞内に液体が貯留していると、酸素を取り込むうえで大きな妨げとなります。そのため、全身に酸素が行き渡らず、低酸素状態や呼吸困難に陥ってしまいます。

なお、心不全の場合では心臓の力は弱まり、心臓から血液が流れ出ていかなくなるため、血液が心臓にたまり始めます。よく「心臓が大きくなる」という表現を使いますが、送り出せなかった血液の量が増えた分だけ、心臓が血液を含み、膨らんだ状態になることを「心臓が大きくなる」と例えているのです。

心臓にたまった血液は行き場を探して、肺に流れていきます。最初は肺の毛細血管に血液がたまっているのですが、それも限界を超えると、毛細血管から血液中の水分が溢れ出て肺の中にたまり始めます。これが「肺水腫」と呼ばれる状態です。肺の中の組織が水浸しになり、呼吸がうまくできません。この時レントゲン撮影をすると、肺が真っ白に写ります。

原因

肺水腫の原因を分類すると下記のように心臓の病気によって発症するものとそれ以外のものがあります。いずれの場合であれ、肺水腫を引き起こす原因が存在するため、その原因を突き止め、治療を実施することが重要です。

心原性の場合

心臓の疾患が原因となって起こります。心臓の機能不全のために肺の血圧が上昇し、その結果、肺胞に水がたまってしまいます。犬の場合では僧帽弁閉鎖不全症などの心疾患でよくみられます。

非心原性の場合

肺炎や気管支炎などの炎症によって肺の血管の透過性が高くなり、そこから水分が漏れ出すことで発生します。

症状

咳や呼吸が荒くなるといった呼吸器系の症状がみられます。症状が重くなると、呼吸を楽にしようとするために首を伸ばし前肢を突っ張ったような状態で座っていることが多く見られます。

重篤化すると、血の混じった泡が出るようになったり、舌が青紫になるチアノーゼの症状が見られます。