腎代替療法(透析療法)
透析とは
腎臓病が末期の状態になると腎臓の働きを人工的に補う必要があります。その役割を担うのが透析です。
血液透析の仕組み
血管に針を刺して取り出した血液をダイアライザーの中に通して、老廃物の除去や電解質の調整を行ってから、再び体の中に戻します。体内の血液を外に取り出すためには、血液の出入り口を確保する必要があります。そのために、ダブルルーメンカテーテルという特殊なカテーテルを、頸静脈などの太い血管の中に入れて血液を効率良く出し入れします。カテーテルを通して血液が血液回路内へ入り、その先にあるダイアライザーで透析処理を受けます。透析された血液は血液回路からカテーテルを通して体の中に戻ります。
血液透析装置は、血液回路内の血流を作り出すためのポンプの役割を担っています。この人工的な血液の流れは、できるだけ体の血液循環に悪影響を与えないように調節されます。また、体外循環を安定して行うためには、透析中に回路内で血液が凝固してしまわないようにするため、抗凝固処置が不可欠となります。透析が終了したら、血管から針を抜いて止血します。腎機能の改善の程度により、この治療を通常1回3時間程度、週に3回程度行います。
ダイアライザーの仕組み
ダイアライザーは、小さな孔が無数に開けられた細い管が約1万本束ねられています。この管の内側を血液が、外側を透析液が流れます。この多数の管の細かい穴を通して老廃物や水分、電解質などが透析液の側に移動します。こうして不要なものがこし出され、血液は浄化されます。浄化された血液は体に戻ります。
血液透析治療の流れ
1. 入院
2. カテーテルの設置
頸静脈などの太い血管にダブルルーメンカテーテルを設置します。病状や動物の性格によっては軽い麻酔が必要になることもあります。
3.血液透析の開始
透析を行います。透析開始時には血行動態の変化が大きいので、ゆっくりと始めます。血液検査で効果や合併症有無を確認します。
4. 血液透析の終了
血液の性状が目標まで改善したらゆっくりと透析を終了します。カテーテルを首に巻きつけて保存します。
5.退院
血液性状や症状が改善し、透析からの離脱が可能と判断されると退院となります。退院後も、定期的な点滴治療や、食事療法、薬物療法を行うことにより少しでも病気の進行を遅らせることが大切です。また、病状によっては維持透析が必要な場合もあります。
血液透析の合併症
不均衡症候群
透析の導入期には、透析中や透析終了後に頭痛や吐き気(不均衡症状)が起こることがあります。これは、血液から老廃物は抜けますが、しばらくの間、脳の中では老廃物が残っていて、脳内の圧力(脳圧)が上がってしまうことにより起こります。不均衡症状が出ないように、最初は透析の効率(血液流量、ダイアライザーの大きさ、透析時間など)を落として行うようにしますが、症状が強い場合は、脳圧を下げる薬(点滴)を使用することもあります。
血圧変動
透析中は血圧変動が起こる可能性がありますので、適宜、血圧測定を行います。血圧低下は、一時的な循環血液量の減少によるものが多く、生理食塩水の補充などで対処します。
出血傾向
血液は体の外に出ると固まります。透析で使用する血液回路も「体外」であり、血液が固まらないように抗凝固薬(ヘパリンなど)を使用します。透析中ならびに透析後数時間、その影響が体内にも多少残ります。そのため、出血した場合には血が止まりにくくなるので注意が必要です。出血傾向が続くと、消化管潰瘍や脳出血、透析肺症(肺の出血、肺水腫)などが起こることもあります。
カテーテルに関連した合併症
カテーテルが折れ曲がったり、血液が固まって詰まってしまったりすることで効率良く透析が行えなくなる場合があります。また、動物が自分でカテーテルを引き抜いてしまったりすることもあります。このような場合は、再手術が必要になる場合もあります。
感染症
カテーテルの周囲や透析回路内に細菌が感染すると、全身の感染症を引き起こすことがあります。
消化器に関する合併症
下痢や嘔吐などの症状が現れることがあります。血液透析の合併症としての膵炎の発症は稀ではありますが、早期診断が困難であるため重症化して致死的な経過をとることがあります。
血栓症
血液透析中に、血液が体の外に出ると血液が凝固しやすくなるために血栓(血液の塊)が形成されやすくなります。血栓が血管に詰まって血流が遮断されることにより機能障害を起こすと血栓塞栓症になります。障害された部位により様々な症状が現れます。
腹膜透析
お腹のなかに透析液を入れて腹膜を使って老廃物や余分な水分を取り除く方法です。