腫瘍科の主な検査

身体検査

体重、体温、心拍数、呼吸数、粘膜の色、体表リンパ節の腫大の有無、脱水の程度、意識・神経の異常の有無などを見ます。腫瘤が触診できる場合は、腫瘤の位置、大きさ、周囲の組織との関係(固着しているかどうかなど)について調べます。問診での飼い主様からの情報(元気・食欲・排便・排尿・その他気づかれている異常)も非常に重要です。特に神経の異常については、異常が認められている間の動画があると診断の助けになりますので、可能であれば撮影したものをご持参ください。

血液検査

腫瘍による全身への影響を調べる目的で実施します。腫瘍から産生される因子により、高カルシウム血症や低血糖が起こること、腫瘍の存在により内臓機能に影響が出ることもあります。部位別にみると、たとえば、腸の腫瘍により消化吸収不良が起こり、低タンパク血症になったり、出血から貧血や血小板減少が起こったりします。肝臓に大きな腫瘍があると肝機能が低下したり、黄疸が出たりします。腎臓の腫瘍によって腎機能が低下したり、尿路を閉塞する腫瘍で急性腎不全が起こったりします。
また、各種の治療を受けることが可能かどうかの前段階評価としても用いられます。手術や放射線治療を受ける場合、麻酔をかけることが可能な状態かどうか、抗がん剤治療を行う場合、薬剤の投与が可能な状態かどうかの判断の一つとなります。

尿検査

治療前の全身状態の評価の一環で行います。尿の性状、尿中の細菌の有無、尿中の細胞の評価を行います(尿路の腫瘍の場合は診断につながることもあります)。尿中に細菌が認められる場合、治療後(特に抗がん剤治療後)に尿路感染症が悪化してしまうことがあるため、治療前に細菌感染に対する治療を行っておくことも、治療を成功させる上で大切なことです。

糞便検査

便の性状、便中の細菌叢の異常の有無、細胞の検査(炎症の有無、異常な細胞の有無など)を行います。特に腸の腫瘍の場合、慢性的な出血から貧血を起こすことがあるため、便の性状の検査は重要です。直腸の腫瘍では、便の塗抹に腫瘍細胞が検出されることもあります。また、直腸検査で検体を採取し、細胞診を行うことも可能です。

画像検査(X線検査、超音波検査、CT検査)

腫瘍の診断において、「何が」「どこに」あるのかを知ることが最も重要です。画像検査により「どこに」あるのかを知ることができ、超音波またはCTガイド下で組織の一部を採取することにより、「何が」あるのかを知ることができます。その点で、画像検査は最も重要な検査の一つです。それぞれの画像検査に利点と欠点があるため、腫瘍の部位によって使用する画像検査機器が異なってきます。CT検査は麻酔が必要となる例が多いため、検査が可能かどうかに制限が出てきます。

組織学的検査(細胞診、病理組織学的検査)

腫瘍から一部の組織を採取し、細胞あるいは組織の構造を見ることで、「何ができているのか」を調べます。体表にある腫瘍は、直接採取することが可能ですが、胸腔あるいは腹腔内にある場合、エコー検査やCT検査で腫瘤の位置を確認しながら組織の採取を行います。組織を採取するリスクとしては、腫瘍からの出血が起こり得ること、採取したルートに腫瘍細胞を播種させてしまう可能性が挙げられます。リスクを考えた上で、治療前に細胞診、あるいは組織診断を行うメリットが高いと考えられる場合に実施します。