頻脈性不整脈

頻脈性不整脈とは

自然のペースメーカとなる洞結節が正常に機能して電気信号を発生し、心臓が60~140回の規則的なポンプ活動を行っている状態を「正常洞調律」といいます。この正常洞調律の範囲を超えて脈が速くなる(1分間に160回以上)タイプの不整脈が「頻脈性不整脈」です。頻脈性不整脈はさらに以下のように分けることができます。

・規則的で速い脈となる「洞性頻脈」
・洞結節以外の場所から発生した電気信号により、規則的な収縮のほかに予定外の収縮が発生する「期外収縮(心房性・心室性)」
・洞結節以外の部位から電気信号が高い頻度で繰り返し発生する
 頻拍:「上室性頻拍」・「心室頻拍」
 細動:「心房細動」・「心室細動」

洞性頻脈

頻脈性不整脈の中でも洞性頻脈は、発熱、興奮、感染など心臓以外の体の調子を反映した機能的なものがほとんどであり、健常な犬猫もみられます。このため多くの場合治療の必要はありませんが、甲状腺機能亢進症や心不全によって起こるケースもあります。

期外収縮(心房性・心室性)

期外収縮は最も多く見られる不整脈です。その約8割は無症状ですが、症状がある場合は、抗不整脈薬が必要になる場合があります。

発作性上室性頻拍

発作性上室性頻拍は、異常な電気刺激が心房、または心房と心室の接合部より発生し、これが複数の経路を伝わって旋回するものです。健常であっても興奮やストレスをきっかけに起こることがあります。失神やふらつきを示すことがあります。

心室頻拍

心室頻拍は、心室内で異常な電気刺激が発生し、それが心室内でぐるぐると回転して起こる不整脈で、1分間に160回以上の拍動で3拍以上続くものをいいます。心室頻拍が起こると、心室の筋肉は速いリズムで収縮を繰り返すようになり、血液を送り出すポンプ機能が低下するため、脳に送られる血液が減少し、めまいや失神を起こすことがあります。

また、心不全の引き金となったり、心室頻拍に続いて心室細動が起こる恐れもあることから、非常に危険な不整脈といえます。薬により心臓刺激を加えることで止まることもありますが、電気ショックや心臓マッサージが必要となることもあります。

心房細動

心房細動は心房内の様々な部分から電気刺激が発生し、それが心房内を旋回することで起こる不整脈です。心房の筋肉がブルブルと振動するような状態となり、心房がきちんと収縮しなくなり、血液を心房から心室に送り出す機能が低下します。元気消失、食欲不振、活動性の低下の原因となります。また、心房内に血栓という血液のかたまりができやすくなり、これが血液にのって脳や全身の血管に詰まると脳梗塞や血栓塞栓症を引き起こすため、治療が必要となります。
血栓予防のための抗血栓薬の投与や、種々の抗不整脈剤による治療を行うことがあります。

心室細動

心室細動は、心室に異常な電気刺激が発生することで突然心臓がリズミカルに拍動できなくなり、心室の筋肉がバラバラに興奮を始めた状態のことをいいます。心室の筋肉が痺れた状態となり、ブルブル震えるだけできちんと収縮できなくなるため、血液を全身に送り出すことが著しく損なわれます。心室細動になるとふらつき倒れ、意識を失い、心臓マッサージがなければ3~5分続くことで脳死の状態となり死に至ります。致死的な不整脈です。いったん心室細動が起こると自然停止することはほとんどなく、電気ショックにて治療することになります。

心房粗動

心房粗動は心房内を電気信号が旋回する頻脈性の不整脈です。多くの場合心筋虚血、心筋症、心筋炎などの原因に伴って起こります。治療としては、薬物療法や犬猫では国内では実施されていませんがカテーテルアブレーションという心筋の一部を熱で凝固させる手術が有効です。